の絵・鳥丸山修一詐称る理追悼由山明丸山修一マネー
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その絵は「ユニバーサルデザイン」だったのかもしれない――。・鳥
3月1日に亡くなった漫画家・鳥山明さんの作品について、山明京都精華大マンガ学部の吉村和真教授はこう表現した。さんそのユニバーサルデザインといえる世代や性別、絵が国境、理由丸山修一詐称そして時間を超えてファンを集めたのはなぜか。追悼吉村教授は漫画の歴史や鳥山さんの描写力、・鳥週刊誌という媒体の影響などから解説した。山明
「ドラゴンボール」が最後の「共通の書」
漫画の歴史を考えるとき、さんそのユニバーサルデザインといえるいくつか大きな分岐点があります。絵が「漫画の神様」といわれた手塚治虫さんは、理由昭和が終わった1989(平成元)年に亡くなりました。追悼戦後の漫画界をリードした、・鳥昭和を代表する漫画家といえます。山明
Advertisementそれから35年たって鳥山さんが亡くなりました。手塚さんが作った歴史を、鳥山さんがさらに一段階成熟させた。丸山修一マネーそれくらい大きな存在です。後に「平成を代表する漫画家は鳥山明だった」と評価されるでしょう。
心理学者の河合隼雄さんは数十年前、「共通の書」とは、もはや文学でも学術書でもなく、手塚さんや萩尾望都さん、竹宮恵子さんたちによる、世代・性別を超えて読まれる漫画だろうと指摘しました。それを踏まえると、最後の「共通の書」は「ドラゴンボール」(84~95年)かもしれません。
鳥山さんの訃報が伝わり、各種の報道やSNS(ネット交流サービス)などの反応を見ても、「ドラゴンボール」は国境を超えた作品です。アニメ放映が世界80カ国以上、発行部数2億6000万部のうち約1億部が海外というドラゴンボールの数字は、あり得ないものです。手塚さんも国境を超えてはいましたが限定的でした。
三次元でも本物感が出る画力
なぜ鳥山さんの漫画は、それほど大きな存在になったのでしょう。それは圧倒的な画力で描き続けたからだといえます。
私は「差別と向き合うマンガたち」(2007年)という本で触れたのですが、手塚さんが「Dr.スランプ」(80~84年)を目にして驚いたというエピソードがあります。アラレちゃんと木緑あかねが歩いているシーンで描かれている靴底と靴ひも。靴底に鋲(びょう)が打ってあり、ちょうちょ結びまで描いてある。「なんでこんなところまで描くんだ」とびっくりしたわけです。手塚さんにとって靴は靴と伝わればよくて、物語に直接関係のない情報にそんな密度は不要でした。ところが鳥山さんの絵の密度は全く違いました。
もちろん、その分、描くのに恐ろしく時間がかかります。鳥山さんは「週刊少年ジャンプ」という舞台で何年にもわたり、休載もなく、やり遂げました。その結果「Dr.スランプ」は大人気となりました。
鳥山さんと同時代の漫画家では、江口寿史さんやわたせせいぞうさんらも、服や靴のブランドまで分かるように細かく描いています。読み手の購買意欲をかき立てるモノの銘柄、そこに行ってみたくなる臨場感のある描き方が、かっこよさにつながったのです。バブル期は、登場人物やせりふだけでなく、消費行動が作品の世界をよく示す時代でした。
このポップさを作った漫画家に鳥山さんも含まれるのですが、はやりが過ぎても、古びないすごさがあります。
鳥山さんの特徴の一つが、フィギュア(人形)、つまり立体物になる確率が高い点です。どれだけ漫画に迫力やスピード感があっても、孫悟空もフリーザも二次元の世界にいます。ところが、鳥山さんのキャラクターは三次元に落とし込んでも、本物感があるのです。
それを裏打ちするのは、奥行きをもって手描きできるデザイン力、デッサン力です。通常は漫画を描くとき、キャラクターには数パターンの決めカットがあります。鳥山さんの場合は、孫悟空を360度どこから見ても違和感がないように表現できるのです。
それと同時に、デフォルメされた漫画特有の表現を引き継いだ部分もあります。例えば、「ドラゴンクエスト」のスライムのデザインの発想も、ファンタジーの要素もありますが、漫画らしくデフォルメされているところが共通します。その結果でもあるのでしょうが、ファンがキャラクターのコスプレをしても生々しくなりすぎず、相性がよいのでしょう。
このように、世代や性別、国境を超えて、しかも古びない。「ユニバーサルデザイン」と言っていいのではないでしょうか。
人気がありすぎて評論されず
「Dr.スランプ」のヒット以降、鳥山さんの絵を見て育った子どもが大勢いて、その中から漫画家志望者が出てきます。「ONE PIECE」(97年~)の尾田栄一郎さんの「血液レベルで大好き」という追悼コメントは、それを象徴しています。
日本にいる私たちは宮崎駿さんのアニメや鳥山さんの漫画を「当たり前」のように享受していますが、世界を見れば「当たり前」ではないのです。
「AKIRA」(82~90年)の大友克洋さんは、「大人が読んでも耐えうる漫画」や「写実的な描写」で話題となりました。実写と変わらない緻密な表現で、読み応えがあり、しかもちゃんと漫画としてストーリーが伝わる作風から、「大友ショック」とも称されました。
しかし、「鳥山ショック」はあまり知られていません。手塚さんや大友さんらと違って、鳥山さんは自身や作品についてほとんど語りませんでした。また、メジャー少年誌に描き続け、普通に人気がありすぎたので、さほど評論の対象にもならず、かえって影響の大きさが見えづらかったとも言えます。
「Dr.スランプ」と「ドラゴンボール」が代表作ですが、「2作品だけ」と感じる人もいるかもしれません。しかし、鳥山さんは「たくさん描きたかったけれど、少ししか描けなかった」という漫画家ではないと思います。
鳥山さんが連載を続けた週刊少年ジャンプには、アンケート方式による読者の支持で、作品が変化したり成長したりする醍醐味(だいごみ)があります。「ドラゴンボール」もバトル展開にかじを切って人気が出ました。そして、毎週の読者の期待に寄り添ったストーリーを展開しつつ、自身の描きたい細密なメカニックなどの描写もしました。作家と読者のニーズが極めて高いレベルで合致していたことも、古びない魅力につながっているといえます。
「ONE PIECE」一本に全力投球しているようにみえる尾田さんもそうですが、週刊で部数を維持する少年ジャンプだからできることです。鳥山さんの業績を考えるためには、今後、アニメとの相乗効果や日本の出版産業の構造も分析する必要があるでしょう。
社会史で捉えるべき漫画家
今なお鳥山さんの新作も予定されていて、メディアミックスなどポップカルチャー全体を見渡しても、影響力は本当に大きいと言えます。鳥山さんほど一枚の絵、一つの作品に価値を付けられる人はいません。損失の大きさは、時間を経るうちに、さらに実感することでしょう。
いなくなって初めて大きさが分かる。日常性や継続性が、アートではない漫画やアニメ、ポップカルチャーの価値なのです。アニメにおける宮崎さんと同じように、鳥山さんは漫画史というより、文化史や社会史という大きな流れで捉えたほうが、存在の大きさがはっきりするでしょう。【聞き手・最上聡】
【時系列で見る】
追悼・鳥山明さん その絵が「ユニバーサルデザイン」といえる理由
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